怖い話 列車事故の後始末

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わたしが住んでいる地方都市には一本のローカル線が走っていた。そのローカル線で数十年前、脱線事故が起きた。詳しい被害状況はよく覚えてないが、数名の方が亡くなったのは確かだ。当時、わたしの叔父は事故現場のすぐ近くで織物業を営んでいた。

事故が起こった時、あまりに大きな音にビックリして仕事場を飛び出すと、叔父の目の前には悲惨な状況が広がっていたと言う。

横倒しになった車体と、散乱するガラスや列車の部品。血まみれになって動けない人、そうでない人。

亡くなっているのが一目瞭然な、人体の一部。

地元の消防団員だった叔父は、救急隊に加わって救助活動にとびまわった。

それが、後に訪れる恐怖体験のはじまりだったのだ。

ケガ人の救助が終わると、事故現場の検証や片付けと平行して、バラバラになった遺体の回収作業がはじまった。どういう状況だったのか、バラバラになった遺体には事故現場から数百メートルも離れた場所まで飛ばされたものもあった。

遺族の気持ちを考えると、たったひとつの肉片さえ見逃してはならないという思いがしたと言う。やがて雨が降り出した。叔父は雨具も身に付けず捜索を続けた。

手、足、指、胴体の一部らしきもの、生々しい血痕の衣服・・・様々な被害者をみつけた。その中に、小さな子どもの右足が落ちていた。

こんな小さな子まで・・・なんて可哀想に・・・

とっさに叔父はそう思った。

その晩、帰宅した叔父は哀しい事故の様子を奥さんに話した。小さな子どもまで巻き込まれた列車事故に、奥さんも同情の声をあげたと言う。暗い気持ちで布団に入った夜中過ぎ、救助活動でヘトヘトになって熟睡してしまった叔父は、不思議な気配にゆり起こされるように目が覚めた。

いつもこんな時間に目が覚めることはない。夢うつつのまま天井を眺めていると、隣りの居間で物音がする。この家には奥さんと、叔父の二人しか住んでいない。その奥さんは一緒の部屋で眠っていというのに。

じゃぁ、居間にいるのは一体ダレだろう・・・? 

よく耳をすましてみると、物音は ペタッ ペタッ、と、人が歩く足音のようだ。

ペタッ ペタッ ペタッ・・・

ペタッ ペタッ ペタッ・・・・

足音はずうっと居間を静かに歩き回っている。

幽霊やお化けなんか全く信じていない叔父は、部屋にあった「肩たたき棒」を持って居間につながる襖を、そっ・・・と開けた。

だが、誰もいない。居間は静かに薄暗いままだ。   

おかしいな?   

怪しみながら電気をつけようとした時、叔父は素足で踏んだ冷たい感触に ギョッ!! とした。

電気をつけてみると、畳が所々濡れている。それはまるで小さな子どもの足跡のように、部屋中、一面に。

さすがに背中がゾッとして、叔父はそのまま布団にもぐり込んで朝を待った。

朝になって、奥さんに夕べの出来事を話しても信じてくれない。もちろん、足跡も残っていない。でも、それから毎晩のように足音が聞こえるのだ。一人で居間を覗くことも、怖くてできない。

この話しをしてくれた数年後、叔父は交通事故で右足を失った。毎晩、居間を歩き回る足音が、あの「列車事故に巻き込まれた子ども」だとはひと言も口にしなかったが、、以来、叔父は亡くなるまでずっと、魔除けのお守りをを身につけ、居間には「おふだ」を祭っていた。

本当にあった、怖いお話。

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