怖い話 廃屋の結婚式場

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3年ぐらいまえ、仕事の関係で廃業した大型結婚式場を視察することになった。バブル崩壊のあおりを受けて倒産した結婚式場は、売れる物以外は全て建物内に放置された状態だった。

視察に行ったのはわたしと不動産屋を含めた計6人。裏手の通用口から中に入ると、少しカビ臭かった。

建物内は惨澹としていたが、第三者が勝手に入り込んで荒らしたという感じではなかった。

建物全体の広さや、どの程度補修が必要かなど話しをしながら、まず最初に入ったのはその建物の中でも一番大きなホールだった。

おそらく大披露宴会場だったのだろう。緞帳のはずされた舞台には壊れかけたテーブルや造り物のウェディングケーキ、段ボール箱なんかが積まれていた。

視察にきた6人でその舞台の前を通り過ぎ、裏手のドアへ抜けようとした時、わたしは一瞬ドキッ! とした。

荷物の積まれた舞台の右片隅に、白いウェディングドレス姿の女が立っているのだ。びっくりして同僚に教えると 「ただのマネキン人形じゃないですか」と笑われた。そうか、マネキン人形か・・・そう納得しながらわたしは大広間を後にした。

建物全部をざっと見て回り、わたしたちは外に出るためにまたさっきの大広間に戻った。マネキン人形のことは怖いのであまり考えないように心掛けた。舞台の前を横切り、大広間のドアを出て、外へ続く通用口へ向かおうとした時だ。わたしは何かの視線を感じて振り返った。

開けっ放しにされた大広間の扉の横には、穴だらけの金屏風が置かれていた。その金屏風の後ろから、体を半分だけ出した状態でドレス姿のマネキン人形が立っていたのだ。

おまけに、その人形の目がまるで生きているように動いて見えた。わたしはものすごく怖くなって前を歩いていた同僚の腕を掴んだ。 

・・・・が。

「ただのマネキンにいちいち騒がないで下さいよ」そんな一言を返されただけで、相手にしてもらえなかった。

ところが、会社に戻ってから珈琲を飲んでいるとあの同僚がやってきて何故かわたしに謝った。

「あのマネキン、最初は舞台の上にありましたよね・・・すいません、あそこでそういうこと考えるの、怖かったもので・・・」

やっぱりわたしの気のせいじゃなかった。その後、例の結婚式場は買い手がつかないまま、今も「売却物件」の看板が掲げられている。

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