怖い話 呪う女

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ありえないような、本当の話をしようか。

神社で働いていた時のことだ。わたしが勤めていた神社はとても広くて、境内を一周歩くだけでも30〜40分かかる。

夕方になって仕事の片づけや戸締まりをして歩いていた時のこと。樹齢何百年という大木が立ち並ぶ境内の片隅に、何か動くものが見えた。よく目を凝らしてみると、それは人間のようだった。境内は薄暗く、こんな時間にここを訪れる人はあまりいないので、その人のことが気にかかった。

わたしは気付かないフリをしながら、通り過ぎざまにチラッ、と視線を走らせた。すると、その人もわたしの方をジッと見ていて、バチッ、と目が合った。

相手は女の人。薄暗かったので年令や人相はハッキリしないが、確かに女の人が大木の後ろから顔半分だけを出してこちらを見ており、彼女はわたしと目が合うと、逃げるように走り去ってしまった。

彼女がそこで何をしていたのか興味があった。普通の参拝客はそんな場所に入ったりしないし、こんな夕暮れに女性が一人でいるような所ではなかったからだ。

わたしは彼女が立っていた大木の裏側に回ってみた。するとそこには、非常に気味の悪い物があった。

大木の根元に、首の無い日本人形が一体転がっていた。

人形の胸には五寸クギが深々と刺さっている。 

・・・・呪い? 

その言葉が頭に浮かんだ。嫌なものを見たなぁ・・・だが、神社で働いている立場上、そのまま人形をほっておく訳にもいかず、回収し、焼却炉に放り込んだ。

社務所に戻って今あった出来事を同僚に話すと、呪われるぞ、と変な顔で脅かされた。呪をかけている所を第三者に目撃されると、呪いが成就しないのだそうだ。わたしは笑ってすませた。呪いなんてバカバカしい、心底そう思っていたからだ。

それから別段、かわったことは起こらなかったた。わたしが何かにつまずいたり、物を落としたりすると、同僚達は「呪いだ!」と言ってからかったものだが、そんなのはありがちな些細な出来事。わたしは至って健康で、事故に遭うこともなく、家族に不幸が降り掛かるなんてこともなかった。

一ヶ月も過ぎると、わたしも周囲も、すっかりあの気味の悪い出来事を忘れてしまっていた。そんなある日、わたしは休日に散髪へ出かけた。自宅近所の馴染みの床屋は、わたしの同級生が奥さんと二人でやっている小さな店だ。

髪を切ってもらいながら、同級生と下らない世間話をしていた時だ、いきなり店のドアが開いて、女の人が飛び込んできた。

彼女は順番を待つでもなく、ものすごい勢いで散髪してもらっているわたしの所までやってくると、床に散らばったわたしの髪の毛をワシ掴みに拾って、そのまま店を飛び出して行った。その行動は、ほんの3秒かそこらだったと思う。わたしも、同級生も、その奥さんも、何が起こったのか理解できずに、しばらく女の人が走り去ったドアを見つめていた。

最近変な奴が多いからなぁ・・・同級生がそんなことを言った。わたしが神社で出会った無気味な女と、首無しの日本人形のを思い出したことは言うまでもない。誰かに呪いをかける時、相手の毛髪を使うとかいう話しを聞いていたからだ。

もしかしたらあの女に呪われているかもしれない、自分が不運だったりすると、たまにそんなことを考える。

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