子供向けの怖い話 ハロウィンの怖い話

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最近はハロウィンの頃になると、日本でもカボチャのお化けキャラクターをよくみかけるね。

オレンジ色のカボチャに、三角の黒い目と、大きくあいた口。

外国ではカボチャをああやってくりぬいて、中身を取出して、蝋燭を立てるんだけど・・・あのカボチャの名前、知ってるかな?

よく見るけど、名前は知らない?

あのカボチャのお化けには、ちゃんと名前があるんだよ。

「ジャック・オー・ランタン」っていうんだって。

ジャック・オー・ランタン・・・・日本語で言うと、ジャックの提灯っていう意味だ。ジャックの提灯・・・でも、ジャックって誰だろう?どうしてジャックの提灯なんだろうね。

実はね、あのカボチャが「ジャックの提灯」て呼ばれるようになったのは、こんな理由があるんだ。

昔、ジャックという名の怠け者がいたのさ。

ジャックは怠け者の上に、酒が大好きな酔っ払いで、母親にお金をせびっては、いつも酒場に入り浸って酒ばかり飲んでた。

毎日酒ばかり飲んでるから、当然、働かない。

働かなければ、お金がない。

お金がなければ、大好きな酒が飲めない。

・・・ジャックは、働かなくても酒が沢山飲める方法がないだろうか、と、いつもそんなことばかり考えていた。

そんなある時、ジャックは偶然、一冊の古い本を拾った。

それはとても古くて、薄汚れていて、そして・・・とても変わった本だった。その本には「悪魔を呼び出す方法」が書かれていたんだ。

悪魔は呼び出した人間の願いを、どんなことでも三つだけ叶えてくれる・・・そのかわり、三つ目の願いを叶えた時、その人間は悪魔に自分の魂を渡さなくてはならない。

本には、そう書かれていた。

・・・・悪魔なんて、馬鹿げてると思うだろう?

そんなもの、いるはずないって・・・普通、本気で考えたりしないね。

でも、「どんな願いでも三つだけ叶えてくれる」って言葉に、ジャックの目は釘付けになった。

・・・・人間てのは、どうしても叶えたい欲望があると、見境なくなるのかもしれない。それとも、ダメでもともと、なんて軽い気持ちでいたのかもしれないね。

とにかく、本当に「どんな願いでも三つだけ叶えてくれる」なら、悪魔を呼び出してみよう、と思ったのさ。

・・・そうして、ジャックは本当に悪魔を呼び出してしまった。

悪魔は言ったんだ。

「さぁ、ジャック、お前の望みを言ってみろ」

腰を抜かしているジャックに、悪魔は優しく言ったんだよ。

「お前の願いを叶えてやろう、ジャック。どんな願いも思いのままだ。そのかわり、三つ目の願いを叶えた時、お前の魂は俺のものになる」

・・・ジャックがどんな願いを言ったか、想像できる?

簡単さ。

お金が欲しいと言ったんだ。

一生遊んでも使いきれないくらいの、沢山のお金が欲しい、と、悪魔に頼んだんだよ。

悪魔はすぐに、山のような金貨を出してくれた。どこの王様も持っていないような、沢山の金貨を、目の前に。

ジャックは突然大金持ちになったんだ。いくら遊んでも、いくら働かなくても、思う存分酒が飲める大金持ちに。

悪魔にもらったお金で、ジャックは毎日毎日、朝から晩まで酒場に入り浸って、浴びるほど酒を飲んだ。ジャックは幸せだった。大好きな酒が、いくらだって飲める。母親に金をせびらなくったって、好きほど酒が飲める。こんな幸せなことが、世の中にあるだろうか?自分は、なんてラッキーな男なんだ・・・本当に、ジャックは毎日、何の苦労もなく、悩みもなく、遊びほうけた上に、酒場に入り浸って酒を飲み続けた。

・・・ところが、そんなジャックの耳元で、悪魔がささやくんだ。

「さぁ、ジャック。二つ目の願いを言え」

悪魔の声は、ハッキリとこうささやき続けるんだよ。

「ジャック、二つ目の願いは何だ?どんな願いもすぐに叶えてやろう。そうして三つ目の願いが叶っとき、ジャック、お前の魂は俺のものになる」

毎日、毎日、悪魔がそう、ささやき続ける。魂の奥まで染みわたるような声で、悪魔が催促するんだ。

ジャックは初めから、願いを三つ叶えてもらおうなんて思っていなかった。金さえあればそれで良かった。願いを三つ叶えない限り、魂を取られることもないから。でも、悪魔はそれを許さない。頭がおかしくなるくらい、悪魔の声は日に日に大きく、ハッキリとささやき続けた。

二つ目の願いを言え!

・・・ジャックはやっと、自分がどんなに恐ろしいことをしてしまったのか思い知ったんだ。魂と引き換えに、悪魔に願いを叶えてもらうことが、どんなに愚かで、恐ろしいことかを。

でも、もう遅い。

自分はすでに一つ目の願いを叶えてもらった。

悪魔は暗示にでもかけるように、二つ目の願いを言わせようとする。

・・・ジャックはとうとう、二つ目の願いを言ってしまった。

「二つ目の願いは・・・・お前が金貨に化けて、俺の財布の中に入ることだ」

悪魔は笑った。

そんなことは簡単だ、と。

そうして、すぐさま金貨に化けると、ジャックの財布に飛び込んだ。

・・・ジャックがどうしたか、わかる?

ジャックはね、財布の口を急いでキュッと縛ると、財布に神様の印である十字架を描いたんだ。それから、教会の神父さまからもらった十字架でグルグル巻きにして、悪魔が出てこられないようにしてしまった。ジャックは財布を家に持ち帰ると、誰にも見つからない場所に隠した。十字架に封印されて、悪魔は出てこられない。それからは悪魔の声が耳元でささやくこともなくなった。ジャックは安心して、毎日酒を飲んで遊び暮らした。

何年も酒を飲んで遊び暮らした、ある日のこと。

家の掃除をしていたジャックの母親が、偶然、あの財布を見つけてしまった。悪魔が封印されてるなんて知らない母親は、その財布のひもを解いてしまった。途端に悪魔は財布から飛び出して、酒場で酒を飲んでいるジャックの所へ姿を現した。

「よくもだましたな」

悪魔は恐ろしい形相でジャックに詰め寄ったが・・・すぐに優しい声になった。

「だが・・・まぁ、いい。二つ目の願いはすでに叶えた。さぁ、ジャック、三つ目の願いを言え。三つ目の願いが叶ったとき、ジャック、お前の魂はいよいよ俺のものになる」

突然現れた悪魔に、ジャックはびっくりたろうね・・・だけど、ジャックは慌てなかった。ジャックは悪魔にこう言ったんだ。

「わかった。三つ目の願いを言おう。三つ目の願いは、お前があのリンゴの木から、てっぺんの大きなリンゴを採ってくることだ」

ジャックは酒場の庭に植えてあるリンゴの木を指さした。

悪魔はリンゴの木のてっぺんまで飛んでいくと、一番大きなリンゴをもぎ取ろうと手を伸ばした。

その瞬間。

悪魔はこの世のものとは思えない悲鳴を上げてリンゴの木に吸い込まれてしまったんだ。

実は、こんなこともあろうかとジャックはあらかじめ準備していたんだよ。

ジャックはリンゴの木の幹に、大きな十字架を彫っておいたんだ。リンゴは神様の楽園にも生えていると言われる聖なる木。その木に十字架が刻んであったものだから、悪魔はあっという間にリンゴの木に封印されてしまったのさ。リンゴの木が枯れない限り、悪魔は二度と出てこられない。

こうして、ジャックは二度と悪魔に惑わされることもなく、大好きな酒を飲んで暮らすことができた。

めでたし、めでたし。

・・・・と、思うだろ?

ところがそうじゃない。

本当に怖いことは、ここから始まるんだ。

よく考えてごらん、ジャックはただの人間だ。

人間はいつか、必ず死ぬ。悪魔に魂をとられなくても、必ず寿命がきて、命の尽きる時が来る。

悪魔からせしめた金で一生飲んで遊び暮らしたジャックも、やがて年をとり、その命が終わる時が来た。

でも、生きている間中、良いことのひとつもしなかったジャックが・・・それどころか、悪魔でさえ二度もだますようなジャックのような男が、天国に行けるはずがない。

ジャックの魂は、真っ逆さまに地獄に落ちたんだ。

地獄には、悪人の魂を求めて、沢山の悪魔が待ち構えている。そんな地獄にジャックの魂は落ちて行った。

・・・ところが。

他の悪人たちの魂が地獄の門に吸い込まれていくのに、ジャックだけが地獄の門からはじき出されてしまった。

はじき出されたジャックに、地獄の門番が提灯を一つ、投げてよこして言ったんだ。

「愚かなジャック。悪魔でさえ二度もだますお前のような男は、地獄にすら入る価値がない。お前は永遠に、地獄でも、天国でもない、寒くて暗い世界を、たった一人でさまよい続けるがいい。その提灯は、永遠に一人ぼっちでさまようお前に、くれてやる」

・・・・ハロウィンの晩、子供たちが作る可愛らしいカボチャの提灯。

その提灯に蝋燭がともされ、家々の玄関に飾られる。

風が吹けば消えてしまいそうな弱々しい提灯の灯りは、一人ぼっちで永遠にさまよい続けるジャックの提灯に見えたのかもしれない。

いつの頃からか、誰ともなく、カボチャの提灯は 「ジャックの提灯」・・・ジャック・オー・ランタンて呼ばれるようになったそうだよ。

・・・子供向けの怖い話。原作はアイルランドの昔話らしいが、これはアメリカ人に昔訊いたものを、読み聞かせ向けに書いたもの。昨年、小学生の高学年に語って聞かせたら、かなり怖かった様子。

今年のハロウィンの怖い話に、いかがです?

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