怖い話-本当にあった世間の怖い話

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恨み・・・というと、どんなことを考える?

怪談のお決まりだと、恨みを抱いて死んだ人間の情念や怨念が具現化して、相手を不幸にしたり、呪い殺したり・・・と、オドロオドロしいが、少し、現実離れしている気もする。リアルっぽく、でも、有りえない話。だからこそ「怪談」としてのエンターテイメント性があるのだろうが、実世界でそんなことが起きると本気で考える人は、少ない。

青白い顔をした幽霊が現れて、自分を追いかけてくる。さらには子々孫々まで祟られて、一族が根絶やしになる・・・なんて考えただけでも恐ろしいが、考えるだけでも馬鹿げている気がするからだ。

だが、誰かに強く恨まれるということは、決して気分の良いものではないし、神仏に対して罰当たりな行為をするのと同じくらい、怖いものだとわたしは思う。

強い恨みの情念・・・他人にそれほど強く恨まれるなんて通常では少ないが、私利私欲のためだけに他人を平気で踏みにじり続けてきた人間は、大勢の人間から強く恨まれることがある・・・そして、決してロクなことがないのだ・・・と、しみじみ感じた出来事がある。これは、そんな話だ。

私の住む地元に、昔から嫌われ者の地方議員がいた。嫌われ者のクセに、選挙では当選する。その男に癒着して甘い汁を吸っている奴らが大勢いたのだ。利害が絡んだ周囲の団体力で、男は長い間議員としての地位に胡坐をかいていた。

癒着して当選したからには、自分を応援する人間たちの欲望を叶えなくてはならない。そこで議員の権力を使って無理難題を突き付け、非常識なことを平気でやってきた。世の中はとかく「無理を通せば道理が引っ込む」ことになっているらしく、正義の側に立ってもの言う人は落選し、ヤクザまがいの不徳な男はしぶとく生き残る。男の子供はたちは良い職につき、良い結婚をし、親族たちは飛ぶ鳥を落とす勢いで出世した。代わりに、その議員のために財産をすべて失ったり、自殺したり、一家離散に追い込まれたり、と、弱い立場の者が徹底的に打ちのめされることが、公然として行われてきた。

その議員がどれほど嫌われていたか、わかりやすく説明しようか。わたしがかかりつけの個人医院を受診した時、待合室でその議員に会った。議員はわたしより先に診察を受け、処方箋をもらって病院を出て行った。彼がこの病院を受診しているとは知らなかったが、非常に嫌な気分だった。順番が回ってきて、わたしは診察室に入ると、医者にそのことを告げた。「先生、あんなのを診てたんですか」、と。医者の返答はこうだった。

アイツは今日初めて来たんだ。だが、あんなのを診てると他の患者さんが嫌がるだろうから、うちでは無理だと言って大きい病院を紹介しておいた。もう来ないよ。あんなのと同類だと世間から見られたら、それこそ迷惑だ。

世間は、その議員の悪徳をしっかり見ていた。議員のために虐げられ、影で泣いた人間が大勢いることもみんな知っていた。それでも、その男から「議員」という肩書を奪うことはできなかった。誰もが理不尽だと感じながら、法の下において男は議員であり続けた。だが、男には誤算があった。それは、自分も「ただの人間だ」ということを忘れていたことだ。

どんな権力者であっても、どんな協力者がいようとも、人は必ず老いて病に苦しむ時が来る、ということを、男は気付かなかったのかもしれない。わたしがその議員と病院で会ってから一年後、彼は帰らぬ人となった。

葬儀の時、それまで癒着していた人間たちが大勢参列する中、会場に乗り込んで遺影に塩をぶちかけてやろうとした人がいたが、幸いにも周囲が気が付いて未然に防がれた、なんて噂を耳にした。男を知っている人間は誰でも、彼の死を「ざまぁみろ」と罵った。そうして、幾人もこう言う人がいた。

俺はアイツの子供がどこで働いているか、どこへ嫁に行ったか、みんな知ってる。あいつの子供が車で自分の前を走っていたら、事故を装って後ろから思い切り追突してやろうと本気で思ってる。そう思ってる人は、大勢いるぞ。

もちろん、そういう啖呵を切る人達にだって家族があるから、本当に実行するハズはないが、それくらい議員の行為を許せない、ということだろう。そうして、そういう「強い思い」は、時に現実となるものだ。

不幸になればいいと誰もが思っているから、議員の家族や親族の不運な話は、すぐ耳に届く。議員の嫁いだ娘たちも、名誉ある地位に着いた息子たちも、左団扇で金持ちになった親族たちも、みんな不幸に見舞われた。ノイローゼになって自殺する者、悪事がバレてクビになる者、権力争いから弾かれて倒産する者・・・と、ロクなことがない。

子々孫々まで祟る日本の怪談さながらに、男の因果は残された者達に受け継がれたのだった。

因果応報、世の習い

本当にあった、世間の怖い話。

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